「藝術と藝能」2002年度学年末試験問題 (2003年1月23日実施)
 採点講評と学生諸君の答案例 (2003年3月11日追加)


 次のシェイクスピア『ソネット』の各空欄に正しい単語を補いなさい。(20点)

第18番
Shall I compare thee to a summer's day?
Thou art more lovely and more temperate.
Rough winds do shake the darling buds of May,
And summer's lease hath ( 1 ) too short a date.
Sometime ( 2 ) hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimmed;
And ( 3 ) fair from fair sometime declines,
By chance or nature's changing course untrimmed.
But thy eternal summer shall ( 4 ) fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal ( 5 ) to time thou grow'st.
  So long as men can breathe or eyes can see,
  So long lives this, and this gives life to thee.

(1) (2) (3) (4) (5)
all too every not lines

第55番
Not marble nor the gilded monuments
Of princes shall outlive this powerful rhyme,
But you shall shine ( 6 ) bright in these contents
Than unswept stone, besmeared with sluttish time.
When wasteful war shall statues overturn,
And broils root out the ( 7 ) of masonry,
Nor Mars his sword nor war's quick fire shall burn
The living record of your memory.
'Gainst death and ( 8 ) oblivious enmity
Shall you pace forth; your praise shall still find room
Even in the eyes of all posterity
That wear this world ( 9 ) to the ending doom.
  So, till the judgement that yourself arise,
  You ( 10 ) in this, and dwell in lover's eyes.

(6) (7) (8) (9) (10)
more work all out live

講評: 2篇とも講義中に毎週何度も暗唱練習をして試験までやった詩だから、講義に参加していた人たちにとっては何でもない問題だったと思う。(5)で複数形の"s"を抜かしてしまった人が若干いた程度で、おしなべて良い出来だった。


 シェイクスピアの作品について、次の各問いの答えとして適切な人名を答えなさい。(30点)

『ロミオとジュリエット』
(1) ロミオが殺したキャピュレット家の男の名前は何か。
(2) ジュリエットが結婚を拒み続けた許嫁の名前は何か。
(3) ロミオとジュリエットの秘密結婚を執り行った神父の名前は何か。
『十二夜』
(4) オリヴィアの屋敷に仕える執事の名前は何か。
(5) オリヴィアの屋敷に出入りしていた道化の名前は何か。
(6) この道化が執事をやりこめようとして神父に化けたときに用いた偽名は何か。

(1) (2) (3) (4) (5) (6)
ティボルト パリス ロレンス マルヴォーリオ フェステ トーパス

講評: 主人公の周りを固める重要人物たちだけれども、ちゃんと答えるにはやはり十分にストーリーを把握していないと難しい。6問中3問か4問ぐらいが平均的な出来だった。(6)の問題に驚いた人が多かったと思う(ゴメンね)。これができれば、講義中ヴィデオの内容に相当ハマっていた証拠。この人名の問題を6問とも全部答えた人も一人だけいた(短大文藝科1年 和田美樹さん、お見事!)。
 なお、私は固有名詞の音引きの有無にはそれほどこだわっていないので、例えば(3)の答えは「ロレンス」でも「ローレンス」でも、いずれも構わない。


 シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』において、なぜロミオとジュリエットは悲劇に陥ってしまったのであろうか? その理由として各自が考えるところを記せ。(20点)

講評: 講義中にヒントを出しておいたけれど、登場人物たちが陥った過ちは何であったかを考えてみることが糸口になる。多くの諸君が指摘してくれたのは、モンタギュー家とキャピュレット家の対立と、それにもかかわらず恋に落ちてしまった二人について。それはその通り。でも、それだけならばテレビの昼メロにだって、よくある話だ。単に、運命にもてあそばれているという説明だけでも、すでに劇中にそういう台詞が見られるだけに、物足りない。更に、そこからもっと踏み込んで人間たちの思いと行動とをよく分析してみると、なぜこの物語が壮絶な結末を迎えたのか、若干なりとも分かってくるだろう。

答案例:
 名門と言われているキャピュレット家とモンタギュー家の両親どうしのいがみあいにあると思う。自分の家系の者が争いをおこしてもいつまで経っても和解しようとはせずに争いだけが続くばかり。自分の子供の幸せを願って、結婚相手を親が決めてしまうなど、実は子供を不幸に追いやってしまうことだけに「愛」を傾けてしまっている。
 めでたくロミオとジュリエットが結婚式を挙げた後、ティボルトとマキューシオのけんかを止めようとしたロミオだが、マキューシオはティボルトに殺されてしまう。親友を殺された怒りが頂点に達してしまい、ロミオはティボルトを殺してしまう。ジュリエットと結婚し、ティボルトとは家族になり愛さなければならない、と言っていたばかりなのに…。気が動転していたとはいえ、このことをきっかけとしてロミオは追放されてしまうのだから、ティボルトを殺してしまったことも悲劇に陥った原因だと思う。
 それから、ロレンス神父の策略にも問題があると思う。キャピュレット家の両親がジュリエットにパリスと結婚しろと言ってジュリエットが相談しに来たとき、神父はなぜあの薬をすすめたのだろう? どうしてロミオがいるマンチュアに逃げなさいと言わなかったのだろう? もしマンチュアへ行っていたら、追っては来るかもしれないが、そこから二人で逃げて暮らせたかもしれないし、誤解によって互いに自殺してしまうという悲劇にはならなかったと思う。
 両家のいがみあい、ティボルト、マキューシオ、そしてロミオの争い、ロレンス神父の策略が悲劇に陥った原因ではないか、と思う。(観光学部1年、中 美砂希さん)


 シェイクスピアの『十二夜』には、どのような哲学・教訓が込められているであろうか? 各自が学んだところを記せ。(30点)

講評: 講義中にも言ったように、こういう問題に学生諸君が不慣れなのは承知の上での出題。だから試験の2ヶ月も前に問題を予告したわけだが、それで何を書くか考えていた人とそうでない人との差が大きく開く結果になった。シェイクスピアの喜劇はただ単に面白おかしいだけでなく、観ていて何か深く感じ入るものがあるはず。それを諸君にも体験してもらい、それがいったい何なのか考えてみようというのがこの出題の狙いであった。
 答案は、劇中のどういうところから、どのような経緯・理由で、いかなる事柄を学んだかが、きちんと書かれているか否かで(無論内容の良し悪しも考慮して)評価した。

答案例(1):
 ヴァイオラのように変装して自分を偽り続ければ、いちばん言いたいことを言えないし、思いを伝えられない。最悪の場合、本当のことを何も言えないで終わってしまうかもしれない。そして、たとえ自分を偽り続けていても、いずれは正体がばれてしまうものである。『十二夜』では登場人物の隠れていた本性がだんだん明らかになっていく。ヴァイオラは男装してシザーリオとなりオーシーノ公爵のもとにつかえ、オリヴィアは兄の死のため喪に服すと誓いを立てたにもかかわらず、シザーリオに出会った瞬間、理性を失って一目惚れをしたり、滑稽な役柄の道化フェステは実はいちばん賢く冷静で物事をよく判断していたり、いつもいばっている堅物な執事のマルヴォーリオはオリヴィアとの運命の恋を信じていたり、そしていつも仲が良くお酒を飲んで馬鹿騒ぎをしていたサー・アンドリューとサー・トービーは実は仲が悪かったり…など。
 人はいつも何かを演じ、そして何かに化けているのだ、と思う。それは何かを隠したり、何かから逃げたりするために演じているのだ、と思う。けど、本当の自分を出せたときにこそ、本当の幸せが訪れたり、そこからまたスタートだったり、何をしなければいけないかなどが分かるのではないか、と思った。 (観光学部1年、中 美砂希さん)

答案例(2):
 『十二夜』は、主人公のヴァイオラ以外、全員が真実を知らなかった。ヴァイオラのかぶっていた仮面に皆が見事にだまされていた。その仮面のせいで、自分の愛する人の為に、女である自分が他の女をくどきに行き、そこではその女にほれられてしまう…。妙な三角関係が続いたかと思うと、ヴァイオラの実兄が現れ奇妙な誤解が生じる。だが兄の出現により、もつれていた糸が少しずつほどけ始める。
 そして、ヴァイオラの立場がどん底になり始めたときに果たされた兄妹の再会によりヴァイオラを厚く覆っていた仮面が外れる。それにより、そこにいる人間が全員夢から覚めたように自分にとって本当に大切な人が誰かを知る。最後にフェステが全てを知っていたかのように去っていく。
 今回この物語は恋愛ですべてがきれいに収まっているが、実際、自分を隠すことは周りの誤解を一身に受けてしまう。だが、自分たちのことでいっぱいになって周りがまったく見えていない人間を、遠くから広い視野で見ていて、自分が思った通りの結末になったと満足する人間も中には居ることを知った。自分は夢におぼれるのではなく、フェステのように、広い視野と知恵を使い、近いところにいるようでも、すこし離れた場所にいることも、大切なんだということを学んだ。 (短大文藝科1年、和田美樹さん)


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