大阪観光大学 観光学部
加藤素明研究室On Line
UPDATED: 19 March, 2008

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観光藝術学 2008年度 (金2前期)

藝術ジャンルの概観: 観光における藝術の諸問題

【科目の系列】 観光基礎科目
【年次】1年次 【学期】前期 【単位】2単位

【講義の目的】
 「観光における藝術の諸相」 藝術諸ジャンルは、観光の側から見れば、観光資源 (tourism resource/ tourist attraction)として重要な役割を担っているとも言えよう。この講義では、藝術のさまざまなジャンルについて代表的な作品を取り上げて紹介し、「藝術」という領域の広がりを概観するとともに、藝術に関わる観光事象の諸問題を検討する。

冊子版への補遺
 現在の観光事業を見渡せば、「観光資源である藝術作品」というのは要するに物見遊山のネタぐらいの意味でしかないように見受けられる。事実、近代市民社会以降、藝術作品は美術館・博物館・コンサートホール等で観客に提供するという形で展示されてきたし、今日ではそれが蕩尽されているとも言うべき姿をもしばしば目にする。本講義は、これらの姿勢に対して慎重な立場を崩さず、「藝術」という概念の、あるいは「作品」という概念のたどってきた歴史的な背景を視野に入れて、冷静な反省を加える場にしていきたい。


【講義計画】
【第1〜3回】 美術(絵画・彫刻・建築など)
 絵画などの造形藝術は重要な観光資源である。今年度はフランスのルーブル美術館とオルセー美術館、及びポンピドゥ・センターを取り上げて代表的な作品を紹介しつつ、ヨーロッパの伝統的美術と近代美術、現代美術の相違について講述する。併せて、観光を目的として作品を展観することの問題点を考察する。
4月11日 ルーブル美術館 西洋のルネサンス絵画
4月18日 オルセー美術館 フランスの近代絵画
5月 9日 ポンピドゥ・センター 西洋の現代美術

【第4〜6回】 演劇
 舞台でのパフォーマンスを主とする藝術は、規模の多少はあれ、大勢の人々を一ヶ所に集めることを前提に営まれてきた。今年度は古代ギリシア劇の中からソポクレス『オイディプス王』を取り上げ、その上演の様子を見ながら、演劇というものが持っている祝祭としての側面について考察する。
5月16日 『オイディプス王』(1):古典劇の上演方法
5月23日 『オイディプス王』(2):古典劇の祝祭性
5月30日 『オイディプス王』(3):ギリシア悲劇と現代

【第7、8回】 日本の古典藝能(能・狂言・文楽・歌舞伎など)
 日本の古典藝能は、日本人に愛好家が多いのは無論のこと、外国人にも熱烈なファンが多く、その魅力の源泉を探りに日本を訪れる人々も決して少なくない。今年度は歌舞伎『暫』(しばらく)を取り上げ、その内容と特質を考察する。
6月6日 『暫』(1):歌舞伎の上演方法
6月13日 『暫』(2):歌舞伎の見方

【第9〜11回】 パフォーミング・アート
 コンサートホール、劇場、あるいは野外において、何らかの形で上演を行う藝術ジャンルをパフォーミング・アート(表演藝術)と言うが、今日ではある種のイベント性を強く帯びる傾向が見られる。今年度は西洋音楽のオペラ・オペレッタを取りあげ、音楽と美術、演劇、そして舞踊が融合した総合藝術としての特質と、現代における上演形態の特質を考える。
6月20日 オペラ: モーツァルト《フィガロの結婚》(その1)
6月27日 オペラ: モーツァルト《フィガロの結婚》(その2)
7月 4日 オペレッタ: J・シュトラウス(2世)《こうもり》

【第12、13回】 映像藝術
 今日では、映画や写真といった映像技術も藝術ジャンルの一つとして受け入れられている。映像作品によって外国の文物や文化を知るということもたびたび経験するし、また、古今東西の映像作品が観光資源を生み出すことも少なくないであろう。今年度はウィリアム・ワイラー監督、オードリー・ヘプバーン主演の『ローマの休日』を取り上げ、映画と観光との関係を考えていく。
7月11日 『ローマの休日』(1)
7月18日 『ローマの休日』(2)



【受講に当たっての留意事項】
講義時数3分の1を超えて欠席した者には、期末試験の受験資格を認めないので注意すること。

【教科書】
特に指定せず、必要に応じてハンドアウトを使用する。

【参考書】
講義中に適宜紹介する。

【成績評価の方法】
期末試験の成績によって評価する。


1.授業評価結果の概要(課題)
【評価する点】
○ さまざまな領域の藝術について、ポイントを押さえて観ることができてよかった。(多数)
○ オペラ・歌舞伎などヴィデオを使って分かりやすく楽しい授業だった。(多数)
○ 美術作品については画家の精神的な部分についての解説もあったので、たいへん興味深く聴くことができた。
○ 藝術というものにさらに興味を持てるようになった。
○ プリントの文章のみでなくスクリーンで映像を流すことで、より理解がしやすくなった。
○ ヴィデオの使い方、黒板の使い方がとても上手だった。
○ 映像を流している間もところどころで説明してくれるので分かりやすかった。
○ 他の授業と比べて、「履修のてびき」通りに進んでいるので、とてもよかった。
○ 講義というものはやはり理屈っぽくあるべきだと思うので、大変満足している。
○ 自分には分かりやすい講義なので大満足です。
【改善すべき点・コメント等】
(1) たまに話について行けないときがある。
(2) ヴィデオを飛ばしとばしにしていたので、内容が分からなくなった。
(3) 理解しにくいです。でも面白いと思います。
(4) 授業中に実習(鑑賞会など)を開いてほしい。実際に生で見る機会をできれば作ってほしい。

2.上記評価に関する教員の取り組み(授業改善策)
○ 多くの受講生諸君から好意的な評価をいただき感謝しています。現象の本質を捉えるにはやはり理論が必要です。大学の講義というものは元来そのためにあるのですが、それを本学の学生諸君もよく分かっていて、安心しました。
【改善すべき点・コメント等について】
(1) 「話」というのが何を指すのか不分明なので、場合分けしましょう。
  (a) 「講義内容についていけない」という場合: 実を言うと、今学期は昨年度までのような「小難しい」藝術学の内容をまったく扱いませんでした。それでも多少は創作上の基本的な理論を説明しましたが、もしそれすら難しかったとすると、おそらくは歴史的背景などの基本的知識についての説明が、なお不十分だったかと思われます。なんとか改善したいところです。でも、あまりそれに関わっていると、藝術についての本筋の内容が薄くなってしまうので、なかなか擦り合わせがたいへんです。
  (b) 「上映している物語の内容についていけない」という場合: 演劇や映画などを見るとき、講義で紹介しているような一定レベル以上の作品ならば、その内容を理解するには、目を使い、耳を使い、そして頭を使って、自分の感覚と知性を総動員する必要があります。内容について行くのは、そもそも簡単なことではありません。だからこそ、講義で取り上げているのです。是非ともがんばってください。
(2) 講義時間と著作権法上の制約があるので、ヴィデオを全部上映することはできません。どうしても飛ばしとばしの上映になります。それを補うために、毎回あらすじを書いたプリントを配って解説していますが、プリントを当日もらってその場でヴィデオを見るのでは、内容を十分に把握できなかったかもしれません。たぶんそのために、場面と場面のつながりを追いかけられない事態が生じるのでしょう。それでは今後は、学生諸君が予習して講義に臨めるように、前の週までにプリントを配布できる態勢を整えたいと思います。
(3) 有り難うございます。難しくて理解しにくくて投げ出したくなるのをグッと我慢して、一生懸命考えながら講義について行く。そのうち面白さが分かってくる。だから、「でも」面白い、と。その姿勢がすばらしいですね。
(4) 今学期は7月20日(日)に受講生有志による歌舞伎鑑賞会を実施しました。5月の講義時間中に何回か、受講者全員に向けてお誘いしましたが、そのときは欠席していましたか? 私はこの種の有志見学会(美術・文楽・歌舞伎など)をちょくちょく実施していますから、また別の機会にでも是非参加してください。
 なお、本学の現行カリキュラム・時間割・履修規程等のもとでは、講義科目の授業時間として(=出席義務を課して)学外実習(鑑賞会等)を行うのは無理です。行き帰りの時間を含めると一日仕事になりますので、平日には不可能。そこで、土日を拘束することになります。実は、かつて試みたことがあるのですが、学生諸君の生活実情では現実的に機能しないことが分かりましたので、それ以来、学生諸君を出席で拘束するのは止めて、有志見学会の形をとることにしています。

(c) Motoaki Kato, 2008