西洋美術史 2009年度 (水2前期)
「西洋近代絵画史:17世紀以降」
【科目の系列】 広域科目(基礎)
【年次】2年次 【学期】前期 【単位】2単位
【講義の目的】
ヨーロッパ世界における美術のさまざまなトピックを取り上げ、歴史的名作を中心に紹介しながら、西洋美術の専門的な議論にも立ち入って講述する。今年度は、近代西洋絵画の歩みについて17世紀からの絵画の変貌について講述する。近代的なものの考え方が藝術の世界にどのように影響を及ぼしてきたかに焦点を当てて考えていく。
冊子版への補遺
本講義では、2年おきにキリスト教絵画史と近代絵画史を交代で講述していますが、今年度からは近代絵画の順番です。今回はバロック・ロココ期(17-18世紀)も取り上げて、伝統的な西洋の絵画が、いわゆる近代絵画へと変貌を遂げる様子をお話ししていきたいと考えています。少々難しいことも話しますが、これも西洋という「異文化」を理解することへの一つの手がかりですから、多少難しくても敢えて講述するつもりです。受講生諸君には是非とも、この講義を通じて異文化の一端に触れ、また講義以外でも、旅行に行って実物を見る等して、その豊かな文化を見聞する経験を積んでほしいと思っています。
【講義計画】
【第1〜3回】 バロック・ロココ美術(17〜18世紀) 教科書pp74-103
宗教画中心のルネサンス絵画の時代が終わると、ヨーロッパ絵画はさまざまなジャンルの画題で描かれるようになる。近代絵画史の始まりとして、まずはこの過程を概観しよう。
【第1回】 バロック美術 (1): 絵画ジャンルの問題 バロックとは? イタリアのバロック美術
【第2回】 バロック美術 (2) :スペイン、フランス、フランドル、オランダのバロック美術
【第3回】 ロココ美術: ロココと「良い趣味」の問題 フランス、イギリスのロココ美術
【第4〜5回】 新古典主義・ロマン主義・写実主義(19世紀前半) 教科書pp104-125
王侯貴族の「良い趣味」を反映した前世紀の美術から一転して、19世紀は画家個人の表現を追求した絵画が多く描かれた。画家の創作意識が、どのような方向に向かったのか考えながら作品を鑑賞しよう。
【第4回】 新古典主義とロマン主義: ダヴィッド、アングル、カノーヴァ、ドラクロワ、ゴヤ
【第5回】 ロマン主義と写実主義: ターナー、カンスタブル、クールベ、ミレー
【第6〜8回】 印象派と象徴主義(19世紀後半) 教科書pp126-147
画家の目に見えた色と形を、そのまま見える通りに描くという、今日では当たり前なことが行われ始めたのは、実に19世紀も後半になってからである。その方法によって画家たちが何を描き表したか、時代順に追っていこう。
【第6回】 印象派:マネ、ドガ、モネ、ルノワール 新印象派(点描派):スーラ、シニャック
【第7回】 後期印象派: セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ
【第8回】 象徴主義: モロー、ルドン、バーン=ジョーンズ、ロセッティ、クリムト、ムンク
【第9〜11回】 抽象絵画の誕生(20世紀初頭) 教科書pp148-189
印象派の方法はその後、目で見た色と形を、画家がどのように再構成して作り直すかに力点が移ることとなった。その再構成の考え方と方法の、さまざまな様相を見ていこう。
【第9回】 フォーヴィスム、ドイツ表現主義、キュビスム、未来派
【第10回】 シュプレマティスム、ロシア・アヴァンギャルド、デ・スティル
【第11回】 アール・ヌーヴォ、アール・デコ、エコール・ド・パリ、素朴派
【第12〜14回】 2つの世界大戦とその後の美術(20世紀) 教科書pp190-207
第1次世界大戦とその後の世界情勢は、ヨーロッパ美術にも多大な動揺をもたらした。その結果として現れた諸々の美術運動を概観しつつ、今日の造形表現が抱える問題点を考究しよう。
【第12回】 ダダイズム、形而上絵画、シュルレアリスム
【第13回】 抽象表現主義、ネオ・ダダ、ポップ・アート
【第14回】 1960年代以降の美術
【受講に当たっての留意事項】
講義時数3分の1を超えて欠席した者には、期末試験の受験資格を認めないので注意すること。
【教科書】(授業で常時使用する分)
早坂優子 『鑑賞のための 西洋美術史入門』 視覚デザイン研究所、2006
p.74から使用する。また、必要に応じてハンドアウトを使用する。
【参考書】
講義中に適宜紹介する。
【成績評価の方法】
期末試験の成績によって評価する。
1.授業評価結果の概要(課題)
【評価する点】
(1) とても分かりやすく楽しい講義だった。(多数)
(2) 絵画(藝術)の世界は奥が深いものだということが分かった。(3名)
(3) スライドを使っての授業はとても分かりやすい。(多数)
(4) 今まで知らなかった角度からの見方について学べた。
(5) 論理的かつ明瞭に進めていて、最も講義らしい講義と言えるものだった。
(6) 話の内容がまとまっていて無駄がなく、満足している。
(7) (教室が)静かなので良かった。
【改善すべき点・コメント等】
(8) 画家がどんな人物なのか知っておく必要があると思った。
(9) 画家の人間関係についてもっと知りたかった。
(10) 進度はむしろ遅いぐらいではないか。
(11) 2限目の終わりはスクールバスが5分後(12:35)に出発するので、少し早めに終わって欲しい。
2.上記評価に関する教員の取り組み(授業改善策)
(1)〜(6)について
多くの受講生諸君から好意的な評価をいただき感謝しています。近代絵画史は、実に多様な表現方法が入れ替わり立ち替わり登場して目まぐるしく展開していきますので、講義にきちんとついてくるのはたいへんだったことと思います。それでも期末試験では、3名の学生諸君がほとんど満点に近い答案を書いてくれました。たいへん嬉しく思っています。
(7)について
私の教室運営を褒めてくれたのだと思いますが、本学専任教官という立場で考えると、別な意味で苦笑を禁じ得ませんね。教室を静粛に保つのは教師として当然の勤めですし、また静粛に受講するのは学生として当然の義務です。私の講義が静かで良いということは、それ自体は当たり前のことなのですが、あるいは本学全体では、そういった当たり前のことが失われているということでしょうか? この件については、学生諸君も教員も真摯な自覚が必要で、真剣に取り組まないといけない問題だと思います。
【改善すべき点・コメント等について】
(8)と(9)について
画家の人となりについては、よく美術全集などの解説に書いてありますね。でも、画家の伝記をいくら読んでも、その画家の作品そのものは分かりません。伝記的な記述もある程度は作品理解に役に立つこともありますが、私はむしろ、そういった付随的な知識に振り回されずに、作品を作品として見る態度が大切だと考えています。
(10)について
進度が遅く感じたということは、もしかすると現代美術についてもっと話を聞きたかったのでしょうか? それならば、確かにちょっと遅かったかもしれません。きっと、バロックやロココの絵画なんかすっとばして欲しいと思ったことでしょう。私も現代美術(20世紀美術)について、時間の都合で講義では割愛したことなど、語りたいことがたくさんあります。もし良かったら、オフィスアワーのときに研究室に来てくれたら、講義で話せなかったことをいっぱい話しますよ。
(11)について
この要望については、聞き入れることができません。本学の2年生にはしばしば、このような甘えた考えの人がいるようで困ります。この大学では2時限目は11時00分から12時30分までと決まっており、その時間講義を行うのが本学における教員の義務です。本学にはこの点で公務に対する考え方が「ゆるい」教員もいるらしいとは仄聞していますが、私はこの点を厳格に考えておりますし、ただでさえ授業時間が足りなくて困っていますので、私の講義を選択した以上は諦めてください。なお、私は12時30分の終鈴が鳴ったら直ちに講義を終えておりますので、スクールバスに乗りたければあらかじめその用意をして、講義が終わったらダラダラせずに速やかに行動すれば済むことです。
(c) Motoaki Kato, 2009
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