2011.02.23作成
2011.04.04更新
塩澤 潔大阪観光大学名誉教授のコラムを連載します。
塩澤潔の辛口「インバウンド」シリーズ第10弾です。
2009年5月7日改訂
辛口「インバウンド」シリーズ(2009年版)
訪日外国人旅行(インバウンド)の歴史、現状、提言
塩澤 潔 (大阪観光大学名誉教授)
主な略歴:日本政府観光局(JNTO)に36年余年在職し、外国人旅行者の誘致並びに受入体制事業に精通している。外国勤務もサンパウロ、メキシコ、香港と通算13年間にわたり駐在し、海外の訪日旅行市場にも造詣が深い。
2009年4月、大阪観光大学名誉教授。
第10回 訪日外国人旅行者倍増計画に関する一つのコメント
さて、このシリーズも最終回になりました。ここでもう一度小泉元総理大臣が第156回国会の施政方針演説で述べた「2010年に訪日外国人旅行者を倍増の1000万人を目標とする。」を検証してみましょう。
既に述べたとおり、国際観光交流の阻害要因は沢山あります。戦争、テロ、暴動、伝染病などの人的災害や地震、津波、台風、洪水などの自然災害は、いつどこで起きるか予想がつきません。国連で採択されたとおり、「観光は平和へのパスポート」であり、世界が平和でなければ観光は発展しません。目標達成のためには、上記のような人的災害や自然災害がないように祈念せざるを得ません。
ビジット・ジャパン・キャンペーンは2009年で7年目に入りました。キャンペーン実施本部の事業方針・計画を受けて、日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部が実施本部事務局となり、地方自治体、民間団体、企業と共同で事業を展開しています。予算も平成19年度は36億円でした。更に、このキャンペーンを全面的に協力推進している日本政府観光局(JNTO)の訪日旅行促進広報宣伝予算24億円と合わせて、60億円でした。しかし、この予算額は主要国の観光宣伝機関と比較して、決して多いものではありません。
例えば、カナダ観光局134億円、韓国観光公社119億円、英国政府観光庁101億円、香港政府観光局91億円など日本の倍以上の予算で、観光宣伝、外客誘致事業を推進しています。 勿論、各国・地域により国・地域事情、誘致方針、職員数、海外事務所数など異なるので、簡単に比較はできませんが、以前より増額されたとは言え、必要十分な予算ではありません。
このような予算枠の中で、誘致対象地域は当然絞込みをせざるを得ず、韓国、台湾、中国、米国、香港を重点市場(五大市場)としているのは理解できます。更に、これらの国・地域以外のタイ、シンガポール、豪州、カナダ、英国、仏国、独国なども重点市場の対象となっています。 JNTOは重点市場に海外事務所を持っており、ノウ・ハウを蓄えているので、キャンペーン事業に参加しているでしょうが、もっと集中的に重点市場に専念すべきでしょう。目標達成まであと2年間を考慮すると、欧州からの誘致は、将来性はあるにしても当面期待はできず、5大重点市場に加え、近場の韓国ソウル以外の主要都市(釜山、テグなど)、シンガポール、豪州に限りキャンペーン事業を効率・効果的に実施すべきです。例えば、韓国観光公社は日本人観光客誘致を最重要課題としており、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡に宣伝事務所があります。これと比較すると日本の場合は予算が少なくソウルにしか海外事務所がないので実質的効果が心配されます。数字のみで国際観光振興や国際観光交流を評価するのは、問題ですが、施政方針演説で述べられた以上、目標を実現したいものです。
(2010年版へ続く)
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